紙面を読んで From Ombudsman | 464号 |

吉田 恵美子
462号「東日本国際大がウクライナ人留学生の受け入れを決める」などを読んで、毎日、ニュースなどで目にするウクライナへのロシア侵攻に対して、改めて自分自身が地域でどう向き合うか考えるきっかけを頂いたように感じました。
福島に住む私たちにとって、ウクライナはある意味、特別な意味を持つ土地。東日本大震災に伴う原発事故後、先例に学ぶべき地としてチェルノブイリを挙げる声を度々耳にしてきました。そして、私自身は、震災後の地域課題の解決の一助になればと始めた「ふくしまオーガニックコットンプロジェクト」のコットン栽培を通して、チェルノブイリと繋がる出会いを頂きました。原発避難者といわきの住民が共に畑を耕す体験を通して交流を深めようと企画された「みんなの畑」という圃場。その圃場でのある年の収穫祭でのことです。
カテリーナ・グジー(Keteryna Gudzii)さん。彼女は、ウクライナの民族楽器バンデゥーラ奏者です。ウクライナのプリピャチに生まれ、生後1カ月でチェルノブイリ原発事故にあい、キエフの仮設住宅に引越。幼いころからバンデゥーラを学び、チェルノブイリ原発事故で被災した少年少女を中心に結成された民族音楽団員として活動。その後、音楽活動拠点を日本に移した体験を持ちます。
その彼女が、収穫祭のゲストとして演奏を聴かせてくれたのです。彼女の奏でるバンデゥーラの音色と澄んだ歌声に、収穫祭の会場となった大熊町民向けの仮設住宅集会所に集まった避難者といわき市民が、共に涙を流したことを今でも覚えています。
震災後の福島に心を寄せて、度々演奏のためにと足を運んでくれた彼女が、今、故国ウクライナを思い、支援のためにと日本各地を回って演奏を続けています。
私たちの身近で、ウクライナからの留学生を受け入れることを決意した大学があることを、誇らしく思うと共に、私たち市民も何か手助けができればと思わずにはいられません。
(ふくしまオーガニックコットンプロジェクト代表理事)
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