紙面を読んで From Ombudsman | 478号 |

野﨑 早苗
愛読しているシリーズ物の警察小説があります。ストーリーも面白いのですが、それを通して少しだけ先を行く「現代そのもの」が描かれていることも読む理由のひとつです。その中に先輩OB刑事が価値観の違いで対立する2人の刑事に「国が人間の容れ物ならA君が正しく、国が人間の集まりならB君が正しい」という場面が出てきます。
A君の価値観も大事ですが、個人的にはB君の考え方が自分の大事にしている感覚かな、と思いながらこの場面を読みました。やじろべえの上に立ったら、B君の方に体重の8割をかける感覚でしょうか。
「日々の新聞」は、いわきに生きる人、いわきに縁のある人を記事にしていますが、ひとりひとりがいわきという地域を作っている、と感じさせてくれる新聞だと思います。小説の中のB君の「人間の集まり」が作っているもの、といったところでしょうか。
取材対象者が家族であったり、コラムを書いた人が知人であったり、挨拶をしたことのある詩人など日々の新聞には時々身近な人が登場することもあります。また、いわきにはこんな素晴らしい人が住んでいるんだ、と教えてもらう記事がしばしば載ります。姑がよく言っていた「死ぬまで勉強だね」という言葉がよみがえります。
広告欄も楽しみの一つです。社会問題に意見している広告が多いように感じられますが、思わずうなずいてしまうことがよくあります。また、書いた方の日常生活が垣間見られることもあり、心がけて奥さんと映画を見に行くことが書かれていた広告が印象に残っています。
今はいわきに住んでいてこの新聞を読んでいますが、もしいわきを離れて生活していても日々の新聞を取り寄せて読んでいたかもしれない、と思います。毎日のニュースなら、ネットやテレビでも情報を得られるけれど、「いわき」を長いスパンで深堀りしている情報紙は、貴重なものだと思います。そしていわきに思いを馳せてちょっと誇らしい気持ちになるかもしれません。
(小名浜在住・主婦)
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