紙面を読んで From Ombudsman | 492号 |
吉田 美佐子
2023年4月30日付の末盛千枝子さんの特集を貪るようにして読みました。
4月から6月にかけて市原湖畔美術館で開かれた「末盛千枝子と舟越家の人々」展のレポートを中心に末盛さんのインタビュー記事もあって、絵本屋をやりながら知らなかったことをたくさん教えていただきました。
すえもりブックスを立ち上げる前は、至光社にお勤めだったとのことですが、至光社と言えば『あおくんときいろちゃん』が思い起こされます。人間の深い所に届くようなそれまでの絵本体験とは違う、あらたな見識を与えてくれるものでした。児童文学者の赤木かん子さんは、日本の子ども向けの本において初めて心理学的要素が反映された絵本であったと評しています。
また、記事の中で末盛さんのお母さまが文化学院のご出身だということにも目が留まりました。
一度、翻訳家の谷口由美子さんを鹿児島にお招きして「大草原の風に吹かれて ローラ・インガルス展」と題し、講演をしていただいたことがあります。おりしも、米国のローラ・インガルス博物館で『長い冬』の初版本から日本の中学生の女の子から送られたファンレターが見つかり、送り主を探してほしい、存命なら本人の了承を得て記念館に展示をしたい、との問い合わせが谷口さんに届いていました。
朝日新聞全国版に記事が掲載され、ほどなく送り主が見つかりました。福岡市に在住の70代の女性、萱野道子さんでした。『長い冬』の翻訳を手掛けたのが文化学院創設者である西村伊作の長女、石田アヤです。講演会には萱野さんのほか、石田アヤの長女の立花利根さんも駆けつけてくださり、60年以上の時を越えて、作品がなかったら出会うこともなかったであろう人と人を繋いでくれたのでした
(絵ほん・cafeアルモニ店長)
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