omb501号

 紙面を読んで From Ombudsman501 

 

画・松本 令子

 

 矢吹 道徳

 紙面についての感想を求められて、あらためて「日々の新聞」との付き合いを思い起こしてみた。
 地方新聞社に勤めていた2人の記者が、自分たちが志向する紙面を目指して、発行母体となる法人を設立したというのが、経緯ではないかと思う。数年前、議員立法により、自ら出資し起業を可能にするワーカーズ・コープ(労働者企業協同組合法)がようやく法制化された。お二人が新聞の発行を目指した頃は、未だ法制化されていなかったので、既存の法に拠らざるを得なかったのではないかと推察するが、その志向には生協組合の運営に30年近く関わった生協人として、非常なシンパシーを感じるのである。
 さて私は、1968年当時の学園民主化闘争(学園紛争)の時代、理論分野を担当することになり、新聞のスクラップを始めた。そして五十六年後の今日、日刊紙5紙、旬刊紙2紙、関係する運動団体の月刊紙数枚を購読し、月単位での切り抜きを行い、分野別に区分して資料としている。旬刊の2紙は「日々の新聞」と「民医連新聞」、月刊紙は元読売新聞大阪編集局長、故黒田清氏が創刊した「窓友新聞」の後継紙「新聞うずみ火」や平和新聞など数紙である。「うずみ火」も編集人はお二人で、「日々の新聞」と「新聞うずみ火」は、そのまま保存している。
 ニューヨーク・タイムズの記者としてベトナム戦争を取材し、ピュリッツアー賞を受賞した国際ジャーナリスト、デイヴィッド・ハルバースタム。その後、ケネディ・ジョンソン政権での政治エリート達の栄光と挫折を描いた『ベスト・アンド・プライテスト』で、その名声を不動のものにした。
 そのハルバースタムをインタビューした友人が、「日本にジャーナリストはいるのかね」と言われ、ショックを受けたという話をしてくれた。そして「ハルバースタムは、日本の記者は会社員に過ぎない、と言いたかったのでは」と理解しという。
 さて私が感じる「日々の新聞」の特徴をいくつか挙げたい。第1に、自ら起業したので制約からは自由である。第2に、旬刊であるがゆえに取材に時間をかけることができ、深みのある調査報道が可能とある。第3に、地域紙という性格から、ローカルな課題を主題とし、それを普遍化することになる。言うところの「グローカル」化である。付け加えれば、一般的に広告とされる部分でも、それ自身が一種の社会時評・文明批評となっていることの驚きである。他にはなかなか見られないことのように思えるし、私にとっては毎回の読む楽しみの源泉でもある。
 今後も地域が解決を必要とする課題に、果敢に取り組んでほしいと願う。

(浜通り医療生活協同組合顧問)

 

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