紙面を読んで From Ombudsman | 507号 |
小野 順一
20年以上も前のことになりますが、私が商工会議所の職員に採用された当時、大黒屋の社長であった馬目佳彦さん(故人)が会頭でした。
入りたての新人職員だった私は毎日、大黒屋六階にある社長室へ会頭宛てに送られてきた資料や文章を届けるのが日課となっていました。当時も電子メールはありましたが、紙での確認を好んだ馬目会頭は、その全てに鋭い目線を向け、赤線を引き、筆圧の強い文字でメモを取りながら精読されていました。そして、一通り読み終わると、決まって秘書の高木さんに、早口で指示を出していました。気を抜いていると、私にも急に指示が飛んで来て、慌てることも度々でした。
日々の新聞第504号の特集記事「大黒屋ものがたり」は、自分が新人職員として、はじめて社会に出た当時、地域の発展に尽力されていた馬目会頭の姿が蘇ってくるようでした。記事のなかで、馬目忠亮専務(当時)が、馬目会頭を回想して、「地域をよくしなければだめなんだ」と言い続けていたことや、「地域のレベルアップのため赤字になっても一流のものを持ってくる」という内容が掲載されていました。
身近で接していた私にとっては、商工会議所の事務所でも、大黒屋の社長室でも、種々の会議でも常に聞かされていた言葉や考え方であり、改めてその意味の深さを感じました。
あれから、かなりの時間が経過しました。当時と今では、社会環境や対応が必要な課題も大きく変わりました。でも、馬目さんの情熱や発想は、次の世代へ受け継がれ、様々な取組みへとつながっていると考えています。
(いわき商工会議所地域振興グループ)
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