紙面を読んで From Ombudsman | 510号 |
松本 恵美子
先日、バックナンバーを読み返していて、2022年7月15日付の465号「高久特集」が目にとまった。1月に高久公民館で、高久の人たちの話を演劇作品として上演したばかりだったので、これを見ていればもっと深く高久と繋がれたかもしれないと悔しくも思った。
私は数年前から、仲間と一緒に地域の方のお話を聞き、聞き手がその方を演じる「わたしの人生の物語、つづく。」という、ちょっと変わった演劇作品を作っている。今回も、紙面で紹介されていた「まほろばの里 高久の歩き方」という大字誌を片手に、稲刈りの終わった田んぼの道を、春になったら青々とした田園風景が広がるのだろうと想像しながら、仲間たちと歩いた。
「私には話すようなことは何もない」。お話を伺うと、みなさん口を揃えてそうおっしゃるのだけれど、聞き手の私たちにとっては知らないことばかりで、驚いたり笑ったり、話していくうちに時間を忘れ、長居してしまうこともしばしば。1人1人の人生は1つとして同じものはなく、かけがえのないものなのだと実感する大切な時間。
その土地に生きる人たちの小さな物語を、その人とその地域に返していく。私たちは「ごきげんよう」という名前でそんな事を続けている。今まで、豊間、田人、遠野、内郷、久之浜・大久、川前、四倉・大野、高久と、いろいろな地域におじゃましてきたけれど、性別も年齢も違う方たちのお話からは、不思議とその時代やその地域のことが浮かび上がってくる。その場所に行き、季節を感じ、人と話す、知っている人がいるとその土地が身近になる。共有できることがあるというのは豊かな事だ。
特集を読みながら、こんなに丁寧に地元の人たちを取材し、伝える地方紙がある事が嬉しいと思った。
さて、私たちはまたどんな人たちに出会えるのだろう。
(平泉崎在住)
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