紙面を読んで From Ombudsman | 511号 |
小野 順一
日々の新聞第507号の特集「まち考 再開発」に「市民はビルではなく街の潤いを求めている」とのレポートがありました。記事では、平の中心市街地でハード主体の開発が進む一方、テナント誘致の困難性や空き店舗の問題が指摘されていました。また、ラトブへの取材として「東京資本の企業から、駅前では、商売にならないと判断されてしまっている」との厳しい意見があることも報告されていました。
その記事を読んで、私は、ラトブ開業前にテナント誘致を担当していた、ある企業の方とのやり取りを思い出しました。ラトブが開業した2007年当時、施設のコンセプトは、「一歩上質」というものでした。誰もが、そのイメージに期待が高まっていたと記憶しています。
ところが、開業してみると、そのコンセプトと現実の違いに多くの方が困惑していました。そこで、誘致を担当していた、その企業の方に「イメージが少し違うようですが?」と率直に質問をしてみると、担当者の方は、困惑したような顔で、こんな回答をされました。「疑問は、もっともです。私達も様々な企業を回りました。テナント交渉も一生懸命やりました。でも、本当に残念ながら興味を持って頂ける会社を見つけることはできませんでした」。
テナント誘致を担当していたのは、誰もが知っている有名な商業施設の関連会社です。その方々をもってしても誘致できないのが当市の現実だったのです。
あれから、16年が経過しました。中心市街地の状況は、その当時より更に複雑になっているような気がします。しかしながら、街の若い世代を中心にその複雑さを乗り越えようとする取り組みも少しずつ始まっているようです。私達も、そのような取り組みが、まちの再生に結び付くように支援していきたいと思います。
(いわき商工会議所地域振興グループ)
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