紙面を読んで From Ombudsman | 512号 |
松本 恵美子
第501号の特集に「88年前の地図2」として平市街の西端の街並みが載っていた。線路とそれに繋がる道を頼りにたどっていくと、今も変わらずそこにある店や無くなってしまった懐かしい店を見つけて記憶がさかのぼる。平面が立ち上がり、一挙に時間を飛び越えて過去の思い出に誘われた。
昨年、私の母校「大野中学校」が小学校に引き続き閉校した。前年「劇団ごきげんよう」という企画で「わたしの人生の物語、つづく。四倉編」という作品を、閉校した大野第一小学校の音楽室で上演した縁で、大野中学校の最後の卒業生3人と一緒に「坂を登れば」「おしまいの唄」という作品を作り、文化祭と閉校式にそれぞれ上演した。文化祭には、地域の人や遠くから卒業生らが集まり、体育館は満杯になった。会場に集まった全員で、最後の卒業生が作り上げた文化祭を見守りながら中学校の最後を見送った。
街並みほどの変化はないかもしれないけれど、自分の生まれ育った場所から無くなっていくものを身近に感じ、この地域はゆっくりと閉じていくしかないのだろうかとぼんやりと考えていた時、いわきの自転車文化を考える「いわき時空散走」という取り組みに誘われた。
実家の回りを自転車で巡っていくと、何もないと思っていた所には、いわき随一の前方後円墳や国の重要文化財を所蔵する寺、そしてそこからつながる物語があった。ここに生まれ育ちながら、何も見てこなかった自分を情けないと思った。と同時に、今気づいたなら今できることがあるかもしれない、無くなることから生まれる何かがあってもいいんじゃないかとも思った。
88年前の地図は過去と現在を繋いでくれている。そして私は、現在と未来を繋げるものを探してこれからも大野を巡り続けたいと思っている。
(平泉崎在住)
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