omb513号

 紙面を読んで From Ombudsman513 

 

画・松本 令子

 

 里見 法道

 511号の「収蔵庫のはなし」はアカデミックな内容だが、そのまま私の今の悩みに直結している。
 10年ほど前に東京からいわきへ戻ってきた。そのときの百箱を超す段ボールを、いまだに処分できずにいる。中身はCD、本、服など多岐に渡る趣味の物だ。物を取っておくのにはお金と場所が必要だが、物を捨てるのにも体力と精神力が必要だ。
 いわきでの生活ではそれらをあまり増やさずに暮らせていた。とはいえ、3DKの住まいも少しずつ埋まってきている。それでも何とか段ボール箱を維持してきたところ、昨年、子供が産まれるという一大イベントが発生した。
 「早く家を建てろ」という両親の言葉をのらりくらりとかわしていたのだが、そうも言っていられなくなった。博物館規模の話でなくても、収納にはお金がかかる。昨今のお高い建築費では書斎という名のコレクションルームなど、なかなか望めない。そこで当然コレクションを間引いていくことになるが、いざ処分するとなるとなかなか進まない。
 何かを選ぶということは、何かを捨てるということ。これは人生についてだけではなく、蒐集物についても同じ事が言える。生活環境が変わると、それに合わせて収納のキャパシティも変わる。残す物の優先順位もその都度変更していかないといけない。本当に人生は「選択の連続だな」と感じる。
 幸いな事に私の妻は、インターネットで物議を醸している、夫の趣味の物を勝手に捨ててしまうような過激派ではない。記事内の栃木県立博物館の件を参考に、しっかりと計画を立てて必要性をアピールし、自分のコレクションルームを勝ち取っていきたいと思っている。
 ここまで長々と自分本位の事を書いたが、結局は愛する我が子の部屋を充実させてしまうのが人生なのだろう。どのような間取り取り組みが、まちの再生に結び付くように支援していきたいと思います。

(丸浜運輸代表取締役)

 

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