紙面を読んで From Ombudsman | 524号 |
石原 哲也
本紙第514号(7月31日版)、ジョーさんと「焼き場に立つ少年」が私にとっては、昨年(2024年)のMVPだった。中・高・大の16年間はほとんど映画館で生活していたようなものだったので、見た映画の本数は数えたくもない。ただ、もし、自分に少しでも「反戦」と言う気持ちがあるとすれば、それは映画のお蔭だ。終戦の時5歳だった自分は戦争を知らない。それでも少しだけ戦争を知ったのは映画を通してであった。
もし、どうしても三本選べと言われれば、仲代達矢主演の「人間の条件」、そして、あの名曲でも知られた「禁じられた遊び」だ。フランスの大きなある駅で、1人にされた五歳のポーレットという少女が、「ミシェル、ミシェル!」と叫びながら走り出し、駅構内の雑踏の中に消えていくラストは、反戦以外のなにものでもなかった。
加えてもう1本は、この「焼き場に立つ少年」だ。この写真は静止画だが、「禁じられた遊び」と互角のあるいはそれ以上の物語を内蔵している。反戦の物語を内蔵している。えらそうだが、私は日本人の想像力を信じたい。この静止画からどれだけのドラマが想像できるか、どれだけの悲しみが湧くか、どれだけの怒りが沸くか、日本人を信じたい。特に最近「想像力が無いのかよ」と思われるような政治家が多いのを見ていると、尚更、無理にも日本人を信じたい。
私は、この「焼き場に立つ少年」を30年近く前に、確か新聞か週刊誌で1度見ており、今回の「日々の新聞」で2回目だが、今回の方が強烈に心に染みた。30年の間に、少しは自分が成長しているのかと思った。みなさん、第514号を、もう1度見ましょう、読みましょう。
(元劇団いわき青春座座長)
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