| 紙面を読んで From Ombudsman | 537号 |

中部 博
5年ほど前に湯本の蔵カフェである備中屋本家斎菊が開店したときに、久しぶりにいわきへ遊びに行き、そこで初めてこの12ページ建ての隔週刊「日々の新聞」を見た。品のよい好みの紙面デザインだなというのが最初の印象で、それから間もなくして定期購読を申し込み、ぼくの家に透明の封筒に2つ折りされた「日々の新聞」が届くようになった。紙面デザインをそのまま見せる透明の封筒がいい。
なぜ、いそいそと定期購読をしたのか。それには3つのはっきりとした理由がある。1つは、いわきという土地との縁があまりにも深いからである。いわきで事業をしていた父に連れられて行ったのは10歳のときで、それからひと言では言えないいきさつがあって60年あまり300回近く、いわきを訪ねている。
ぼくはいわきから200㎞ほどの町で生まれ育って、その地域から出たことがないが、小名浜に揚る鰹や烏賊については、ちょっとうるさい。いわきへ行けば小名浜へ立ち寄り魚介類を仕入れることが、湯本の温泉と同じぐらい楽しみだからだ。
東日本大震災と原発爆発事故のときは、初老の者が駆けつけたところで足手まといになるばかりだろうから、じっと我慢して見守ることに歯をくいしばって耐えていた。事態が落ち着いた頃に、いわきと宮城に取材で何度も通った。
その土地にいる友人2人の震災体験と現状について、小学館の長期連載ブログに書き綴った。ぼくができることは、それぐらいのことだった。
2つめの理由は、ぼくの趣味のひとつが、小部数発行や地域刊行の雑誌や新聞を漁って、定期購読することだからである。3つめの理由は、この新聞が面白いからだ。次はそのことを書きたい。
(ノンフィクション作家・日本映画大学非常勤講師)
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