411号-1

 福島県は全国四位の森林県で、県土の七割の974000haを有しているが、福島第一原発の事故で、林業は大きな影響を受けている。間伐など森林整備はいま、事故前の半分で、森林の公益的機能の低下を危惧している。阿武隈山系を中心とした地域のシイタケ原木の生産も困難な状況。野生のキノコ・山菜の出荷制限も多くの市町村で続いている。
 このようななか、アルプス処理水(トリチウムなどを含む汚染水)という新たな放射性物質を大気中、海洋に放出することは反対。わたしは双葉郡八町村の森林組合長も務めている。国は森林全体の除染はしないという方針なので、除染されたのは人家の周辺の森林だけ。避難している人たちの多くが帰還するにあたり、不安を感じている。
 森林組合は所有者の委託を受けて森林を整備しているが、所有者の森林経営の意欲の低下や関心が薄れ、適正な管理が行われなくなる恐れもある。多くの組合員はセシウム、トリチウムなどというのではなく、放射性物質という大きなくくりで理解している。森林整備がされないということは公益的機能の低下につながり、下流地域の県民生活にも大きく影響する。
 原発事故以降、伐採場所の空間線量率、木材の正面線量率の測定などデータを集め、販売先に提供して消費者との信頼を築いてきたが、あらたな放射性物質の放出はその信頼関係もなくなってしまうのではと心配している。