WOWOWで岩井俊二監督の特集をやっていたので、「Love Letter」(1995年)と「ラストレター」(2020年)を合わせて見た。タイトルでわかるように、どちらも手紙が重要なモチーフになっていて、物語のなかで一番鍵を握っている人物が、すでに死んでしまっている。それも共通している。「Love Letter」は北海道の小樽、「ラストレター」は宮城県の仙台と白石が舞台。ロケも現地で行われた。
仙台出身の岩井監督は市川崑好きとしても知られている。「ラストレター」は全編に仙台を中心とした宮城愛に溢れていて、映像が美しい。震災復興ソング「花は咲く」の作詞や映像も岩井さんが担当していて、そこからは仙台、宮城、東北への思いが伝わってくる。
「ラストレター」は「Love Letter」のアンサー映画。白石の同じ高校に通っていた姉妹と男の子の物語で、高校を卒業して25年後、姉妹の姉は自殺し、姉を愛してきた男性と、その男性に恋心を抱いていた妹が再会する。男性は独身のまま芽の出ない小説家をしていて、賞をもらったデビュー作を乗り越えられないでいる。男性を福山雅治、妹を松たか子が好演していて、25年前といまの糸が少しずつたぐり寄せられて、それぞれの思いが明らかになっていく。
岩井さんの原体験の集大成として描かれたこの映画は、決してセンチメンタリズムに陥らず、恋愛映画特有のべたべたしたところもない。仙台の初秋の気候のようにさわやかで、福山の冴えない小説家ぶりがいい。
ロケ地は白石城の外堀だった沢端川、仙台の一番町商店街、ゆりの木公園、大崎市図書館など。上空からの映像で杜の都・仙台が俯瞰できる。