433号

 割烹「一平」が2月下旬、小名浜字下町の以前と同じ場所に新築オープンした。それぞれ個室で、奥は最大70人まで対応できる広間にもなり、手前の空間の壁にはいわきの風景を映像で流している。おかみはもちろん長谷川雅子さん。店主で板長はご主人の隆さん。雅子さんは「震災から10年後に、このようなお店を始めるとは思っていなかった」と話す。

 あれからもう10年、あっという間のような気がします。「歩くウニ」(生ウニの活造り)ができなかったのがせつなく「お出しできるまで死にたくない」と思っていました。
 試験操業は3月末で終了し、4月以降、拡大操業が始まるでしょう。ウニ漁は5月からですから、果たして採鮑組合でどうするのか。生のウニを売ってくれれば「歩くウニ」ができるのです。この隣に工場もありますから。お客さんが待っているし、喜ぶ顔が見たいです。「歩くウニ」は、いわきの目玉商品にしたかったですしね。メニューにも入っています。夏は歩くウニ、冬はアンコウのどぶ汁です。
 汚染水問題ですか。汚染水は怖いです。流れていても、わたしたちにはわからないですから。トリチウムは取り除けないそうですし。福島だけが負のものを預けられて、いまだに苦しんでいるのですから、汚染水はどこかの海に運んで、そこで流してもらえばいいのです。
 福島の海には流さないと約束してほしいです。気の毒ですよ、福島第一原発の周辺には、いまだに帰れないところがあるのですから。太陽光のパネルも処分する場所がないそうですね。どうするのでしょう。原発のように、いつかは処分技術ができるだろうと、進めてしまっているのでしょうね。
 
 コロナ禍のなかでの船出で「新しい店は静かに開けます」と言ったのですが、みんな待っていてくださったのか、お祝いのお花の多さにびっくりしました。わたしも主人も元気ですし、いわきのために頑張ってやれるだけやろうと思っています。
 主人が料理を作ってくれることがうれしいのです。四十数年いっしょの弟子と若い人もいます。ここでの営業を2年半も休んでいましたが、仲居さんも5人ついてきてくれました。ですから安心しています。お客さまに喜んでいただきたいです。仲居さんにも「心を込めてお出ししてね」と言っています。
 新しい一平になったのですよ。ランチが好評なので、夜につなげていきたいです。個室、換気、ウイルス対策など安全にと思ってやっています。80を過ぎても船出して、こういう仕事ができることに感謝です。この仕事は楽しく、好きです。