福島臨海鉄道の直営セレクトショップ「浜の駅 おなりん」(いわき市小名浜定西)が26日、閉店した。オープンからわずか1年半。コロナ禍ということもあって入場者数やオリジナルグッズの売り上げが伸び悩み、苦渋の決断となった。
「おなりん」は「福島臨海鉄道の歴史の紹介や今をPRすること」をコンセプトに昨年4月にオープンした。1階はコンビニの「ミニストップ」で展示・物販スペースは2階。床には線路の絵が描かれていて、さまざまなパネルや機材、切符なども展示されている。さらにオリジナルグッズ(Tシャツなど)も販売されていて、市外の鉄道ファンも訪れていた。
福島臨海鉄道はJR常磐線の泉駅と小名浜駅を結ぶ貨物専用鉄道を運営していて、その歴史は1915年(大正4)に遡る。そもそもは江名から水産物を運ぶ馬車鉄道「磐城海岸軌道」が前身で、すでに1907年(明治40)には小名浜と泉駅を結ぶ「小名浜馬車軌道」が敷設されていて、1918年(大正7)には東商会の買収によって泉―小名浜―江名間が確立された。
その後(1941年)、日本化成の前身である日本水素に経営が委ねられて社名を「小名浜臨港鉄道」に変更。1967年(昭和42)に国鉄、沿線自治体、企業が出資する臨海鉄道方式で経営されることになり、社名が「福島臨海鉄道」になった。1972年(昭和47)には旅客営業を廃止し、貨物専用鉄道になった。
その歴史を紐解いてみると、「小名浜臨港鉄道」として泉―江名間を走っていたのは、1953年(昭和28)から江名鉄道が休止した1966年(昭和41)までの13年間ということになる。
子どものころ、泉―江名の区間を何回か利用したことがある。まだ、車が普及していない時代で、だれもがその路線を「臨港」と呼び、時間を合わせて利用していた。それは町なかを走るうえに車両数も少なく、路面電車の趣があった。小名浜駅から栄町経由で永崎海岸、馬落前、江名駅とつながる路線は、風光明媚で趣があった。思えばのんびりとした時代だった。
「おなりん」には当時の切符が展示されていた。そのほとんどが江名鉄道のもので、起点は永崎が多い。料金を見てみると、時代によってさまざまなのだが、「永崎―泉」は25円、「永崎―平」は75円と38円(ともに2等)というのがある。
この施設ではミニチュアの機関車を走らせるなど、季節ごとに臨海鉄道にふれてもらうためのさまざまなイベントを行ってきたが、思うように利用者が増えず、多くの市民に認知してもらえないなかでの閉店となった。