モノクローム

 大竹英洋さんのこと437号 

 写真家の大竹英洋さん(46)が第40回土門拳賞を受賞した。写真集『ノースウッズ 生命を与える大地』(クレヴィス)は、アメリカとカナダの国境付近から北極圏にかけて広がる原生林に20年間通い詰めて動植物などの生態系と人とのかかわり、自然現象を記録した。
 2011年1月に平豊間の絵本美術館で大竹さんの写真展「もりのどうぶつ」が開かれ、大竹さんにインタビューして特集記事を書いた(「日々の新聞」190号)。その後も本やテレビ番組で活躍を見たり、写真展のお知らせが届いたりしていたので、受賞を聞いた時はとてもうれしかった。
 もともとジャーナリスト志望だった大竹さん。大学でワンダーフォーゲル部に入って自然に興味を持つようになり、3年生の時に「写真家になりたい」とカメラを持った。テーマに悩んでいた4年生の秋、夢にオオカミが現れ、ジム・ブランデンバーグの写真集『ブラザー・ウルフ』に出会い、大学を卒業して間もなくノースウッズに通い始めた。
 長い時には1年の半分以上を森で過ごす年もあった。深い森に小屋を借りて森を歩き、森を知り、森に学ぶ。湖をカヌーで渡り、湖畔にテントを張り、たき火で体を暖めながらひとり満天の星空を見上げる。平坦な森と湖が果てしなく続き、行けども風景は変わらないが、何年も通っていると見えるものが違ってきた。
 この間、オオカミに会えたのは10回ぐらい、その半分は大竹さんの姿を見てさっと姿を消した。印象的で大竹さんらしいのは、生まれたばかりの子ジカの写真。大きく純真無垢な瞳は、人間の赤ちゃんと同じだ。
 コロナ禍のなか、大竹さんの写真集を開いてノースウッズの森を歩きたい。

(章)

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