モノクローム

 山口弥一郎さんといわき447号 

 元気でいたら今年、100歳になった大叔母は生前、女学校時代の思い出話になると「山口先生と岩崎先生」と、ふたりの恩師の名前を必ず口にした。「『伝説や言い伝えを集めてきなさい』と宿題を出されてね」と。
 山口先生とは、地理学者で民俗学者の山口弥一郎さん(1902—2000)。福島県大沼郡新鶴村(現在の会津美里町)に生まれ、東北の地理学、民俗学に大きな業績を残した。1925年(大正14)から1940年(昭和15)まで磐城高等女学校の先生をして、常磐炭田や1933年(昭和8)の三陸津波、その翌年に発生した東北各地の凶作被害などの調査に歩き、研究した。
 なかでも津波の調査研究はライフワークで、三陸津波の調査に基づいて『津波と村』を1943年(昭和18)に出版した。東日本大震災のあと『津波と村』は復刊され、全国的に注目された。
 いま、いわき市暮らしの伝承郷でロビー展「山口弥一郎」が開かれている(10月31日まで)。小さな展示だか、山口さんの生涯にわたる研究の足跡がたどられていて、民俗研究家の高木誠一さん、磐城高女の同僚だった岩崎敏夫さん(民俗学者)、高木さんの甥の和田文夫さん(民俗研究者)たちと創設した磐城民俗研究同志会(のちの磐城民俗研究会)にもふれている。
 気になるのはやっぱり、山口さんがいわきにいた15年間のこと。ロビー展に合わせて、先日、県立博物館主任学芸員の内山大介さんの講座「山口弥一郎がいわきに残したもの」が開かれた。内山さんの話を含め、いわき時代の山口さんをそのうち紙面で伝えたいと思っている。
 山口さんの『津波と村』について、内山さんは11月5日午後1時半から、福島県立博物館の講堂で話をする。当日、ZOOMでも講座をライブで視聴できる。視聴希望者は、件名に「震災遺産講座視聴希望」、本文には名前とメールアドレス、所属(任意)を明記して、general-museum@fcs.ed.jpまでメールで申し込むこと。締め切りは10月31日。

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