為雄さんの宝ものマップ | 422号 |
みろく沢炭礦資料館の渡辺為雄さんが亡くなった。
昨年夏にまちポレいわきで上映された映画「作兵衛さんと日本を掘る」に為雄さんが登場していて、炭礦資料館で石炭を燃やしたり、カンテラをつけたりと大活躍だった。監督の熊谷博子さんに頼まれて石炭を掘る音を収録した際には、資料館の敷地の石炭層が出ている場所で横になってツルハシを振るった。
「あの資料館に入ると炭鉱のいいにおいがしてくる。筑豊は炭鉱の跡が残っていないのに、いわきはぽつんぽつんとまちなかに残っていて、大事にされているのがわかる」。熊谷さんの話を聞いて、久しぶりに会いたくなり、数日後、弥勒沢に出かけた。昼寝をしていた為雄さんを起こして、1時間半ぐらい話をした。それが最後になった。
為雄さんに初めて会ったのは、みろく沢炭礦資料館が完成した時だった。資料館は平成元年に開館したが、完成したのは数年後で、炭鉱への思いなどを聞き、そのあと展示物の説明を受けた。
以来、時々、為雄さんを訪ねた。事前の連絡はせずにふらりと行って、車があれば自宅や資料館にいなくても、周囲を探すと会えた。内郷に残る炭鉱の跡を案内してもらったこともある。山神さまがあると、為雄さんは車から降りて手を合わせた。
昨年の夏に会った時、完成間近の「白水の里の宝ものマップ」ができあがったら、連絡をもらう約束をした。冬に連絡があって訪ねたが、あいにく留守で会えなかった。そのうち新型コロナウイルスが流行し始め、そのままになった。
訃報を知ってお焼香に自宅に行き、宝ものマップを見た。分身のように、為雄さんの思いがぎゅうぎゅう詰めにされていた。
(章)
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