426号

 唱歌「ふるさと」426号 

 NHKの朝ドラ「エール」で古関裕而をモデルにした主人公の古山裕一の幼なじみ、佐藤久志が歌った「栄冠は君に輝く」のことを、4面のストリートオルガンでふれた。その久志が歌手を目指すきっかけになったのは唱歌「ふるさと」だった。
 両親の離婚で落ち込む小学生の久志に、歌手の森山直太朗さんが演じた担任の藤堂清晴先生が歌った歌で「佐藤も一緒に」と誘った。泣きそうになりながら歌い始める久志に「やっぱり君、いい声をしているよ」と、藤堂先生は言った。
 「ふるさと」は作詞が高野辰之、作曲が岡野貞一。大正3年に尋常小学校の6年生の唱歌として発表された。文部省唱歌だったために長く作詞・作曲者がふせられ、昭和40年代に認められた時には2人とも亡くなっていた。音楽の教科書には平成4年から名前が記載されるようになったという。
 高野は長野県水内郡永江村(現在の中野市)で生まれ育った。22歳で上京し、東京帝国大学で国文学を学び、「近松門左衛門全集」などを手がけた国文学者でもあった。ライフワークは日本歌謡史の研究だった。
 岡野は鳥取県邑美郡古市村(現在の鳥取市)に生まれた。岡山の姉のもとでキリスト教系の学校に通って音楽の基礎を学び、東京音楽学校に入学。教授となり音楽教育の指導者育成に力を入れた。
 2人とも文部省歌の作詞、作曲委員で、ほかにもコンビで「春の小川」や「おぼろ月夜」「もみじ」などを作っている。「ふるさと」の舞台は高野の故郷。棚田が広がるのどかなところで、かの山が見え、かの川が流れる。
 大勢が集まった場所でよく、みんなで「ふるさと」が歌われる。作られて100年以上、日本人のこころの故郷になっている。

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