
鳥のはなし | 440号 |
ここ1カ月ほど、うぐいすの鳴き声が間近に聞こえていた。わが家の庭のどこかに巣をつくったかのような近さだったが探さずに、耳でその存在を楽しんでいた。このところは「ぴーぴー」と、ヒナの鳴き声がしている。
久しぶり(「小野町処分場に反対する市民の会」の解散時以来なので約8年ぶり)に訪ねた戸澤章さんのログハウスの書斎でも、森のような庭で放し飼いしているかのように、うぐいすの鳴き声がすぐそばで聞こえた。政府が決めた海洋放出の方針について、ひとしきり考えを聞いたあと、やはり鳥の話になった。「私の前でカラスの悪口を言うと大変だからね」と。
著書『ちっちゃな自然』でもふれているが、戸澤さんは以前、カラスを飼っていた。巣から落ちて怪我をしていたヒナを連れ帰り、数日後には放したが、そのまま居ついてしまった。
名前はピーコ。食卓の刺身を欲しがり、ビールにも興味を持った。戸澤さんの母の真似をして、その辺の花を取ってきて仏壇に置くこともあった。ある日、バラの花が供えてあった。近所の庭から失敬してきたようだった。
「これでは迷惑をかけてしまう」と、戸澤さんは車に乗せて石森山で放した。ところが家に帰ると「お帰り、がー」と、ピーコが出迎えた。次は段ボールに入れて黒い袋をかぶせ、車でぐるぐる回って閼伽井嶽の奥で放すと、さすがに戻って来なかった。しばらくの間、近くにカラスの姿を見つけると、奥さんは「ピーコ、ピーコ」と呼んだという。
戸澤さんがいま、一番気にかけているのは、小川の夏井川に1羽残っているコハクチョウ。1日おきに様子を見ている。この新聞の締め切りが終わったら、小川に行ってみるつもりだ。
(章)
そのほかの過去の記事はこちらで見られます。