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 映画「TOVE トーベ」のこと448号 

 いつごろからだろう。SNSで「映画『TOVE トーベ』が秋に公開」という情報が時々、発信されるようになったのは。そのうち秋が10月と具体的になり、公開を心待ちしていた。トーベはフィンランドの画家で作家のトーベ・ヤンソンのこと。ムーミンの物語の作者と言った方がわかりやすいだろう。
 残念ながら9月の段階で公開が決まっていたのは東北で仙台と盛岡だけだった。ところがそのうち、まちポレいわきでも11月5日から、フォーラム福島で11月26日からなど、上映する映画館が増えている。
 トーベは1914年、フィンランドで生まれた。父はスウェーデン系フィンランド人の彫刻家、母はスウェーデン人の画家で、芸術と家庭がまざり合ったようなアトリエで育った。映画は86年の人生のなかで前半生、それも1940年代半ばから50年代にかけての10年間を扱っている。
 第二次大戦中、トーベは15歳からイラストを描いていた政治風刺雑誌に、独裁者たちを痛烈に揶揄する絵を描くようになり、そこに実名で署名もした。署名の横にはいつからか鼻の長い生きものが現れた。その原型は実は、幼いころに弟とけんかをした時、トイレの壁に描いた醜い生きものだった。
 そんなムーミン誕生の背景や画家としての葛藤、交友関係など、もがきながら必死に、自分に誠実に生きていくトーベの生きざまが描かれている。スナフキンのモデルと言われている人物も登場しているので、キャラクターたちを頭の片隅に置いて見るのも楽しい。
 トーベのアトリエはかなり正確に再現されているという。映画を見て、再度、ムーミンシリーズを読むと違う味わいを感じられるだろう。

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