452号

 弥一郎さん特集のこと452号 

 特集「山口弥一郎といわき」は昨年10月に、いわき市暮らしの伝承郷で開かれたロビー展「山口弥一郎」と、それに合わせて行われた福島県立博物館主任学芸員の内山大介さんの講座「山口弥一郎がいわきに残したもの」がきっかけだった。
 ふり返れば、数年前に県立博物館で開催された弥一郎展と、同時期に出された弥一郎関係の資料の報告書を見た時から「いつか特集をしたい」と思っていた。この数カ月、著作を読み、会津若松の自宅や生まれ故郷の新鶴を訪ね、息子さんに話を聞くなど、少しずつ準備をしてきた。
 九面に掲載した教え子は時々、手紙のやりとりをしている103歳になる大叔母で、卒業アルバムを見ながら磐城高女時代の思い出を手紙に書いてくれた。 
 弥一郎さんは地理学からその土地で暮らす人々の生活に目を向け、民俗学の世界に入っていった。磐城民俗研究会で一緒に活動した和田文夫さんは生前「民俗学は、その事象がどのような環境で生まれ、時代とともにどう変わっているのか、将来までも研究する」と話していた。
 この号はいわき時代の弥一郎さんの特集だが、次号では岩手時代を取りあげる。その後は随時伝え、弥一郎さんの人生と調査・研究の足跡をたどっていきたい。そこには、いまを生きるわたしたちへのメッセージがひそんでいて、目を凝らし、耳をすますと、見えたり聞こえたりするだろう。

(章)

そのほかの過去の記事はこちらで見られます。