456号

 ビッグイシュー426号456号 

 この新聞が読者の手元に届くころ、「ビッグイシュー日本版」の426号(3月1日号)が発売される。3月1日号は毎年、ふくしま特集。友人でフリージャーナリストの藍原寛子さんと、ふくしまのいまを伝えている。
 12月に東京でイシューの編集長の水越さんと3人で会って、特集のテーマなどを話し合うのが恒例になっている。でも、ここ2年はコロナ禍で、zoom編集会議を余儀なくされている。近況報告や最近の社会情勢など、おしゃべりは尽きない。会議の終わりに近づいてようやく本題に入り、その場では決めずにそれぞれがグツグツ煮詰める。
 会議でまったく机上に載らなかったことがテーマになる場合もあるし、七変化する場合も、そのまま進む場合もある。原発事故から11年になる今年は、初めから3人とも同じ認識だった。福島第一原発の敷地内のタンクにためられたトリチウムなどを含む汚染水を薄めて海に流す「海洋放出」。国の計画では来年から始める予定なので、今年の特集と思った。
 タイトルは「海洋放出考 ふくしまの11年」。フロントはいわき市の空撮家、酒井英治さんが撮った、永崎海岸の磯の美しい写真。次は請戸の漁師の高野武さんを追ったルポルタージュ。高野さんは浪江町議でもあり、汚染水の海洋放出についての意見書と決議をこれまでに3回、議会に提出している。
 さらに人と魚と水の関係学研究者の水口憲哉さん(千葉県いすみ市)と、環境放射能の研究者の天野光さん(茨城県常陸太田市)のインタビュー。水口さんは長年、原発建設計画地域の漁民たちの闘いを見守り、支え続けてきた。過去の歴史、経験にヒントがあると指摘している。
 天野さんは原子核工学を学んだ学生時代や、日本原子力研究所での研究などにふれながら思いを伝えるとともに、福島第一原発のタンクの中身を詳しく、わかりやすく説明している。また、いわきの海を空から見続けている酒井さんは、自身の海洋放出考を語っている。ぜひ、この特集を多くの人に読んでいただきたい。

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