「パンドーラーの箱」のこと | 462号 |
今年の初めに環境放射能の研究者で、福島第一原発事故後、いわき放射能市民測定室たらちねにもかかわっている天野光さんをインタビューした。高校時代に量子力学の初歩的な授業を受けて、真新しさと将来性を感じ、東北大学工学部の原子核工学科に進学した。
女川町に計画された東北電力の原発建設をめぐり、漁業者たちが反対運動をしていた時で、天野さんは大学の仲間たちとともに反対運動に加わった。賛成と反対にわかれる地域の分断を目の当たりにし、やがて条件つきで少しずつ賛成に転じて建設に向かって進んでいった。
大学院を修了後は原子力開発や推進に直接携わらない仕事を選び、茨城県東海村の日本原子力研究所(現在の日本原子力研究開発機構)に就職。そこで長年、環境中の放射性核種や挙動を研究してきた。
チョルノービリ原発事故後は現地に何度か通って、周辺の環境汚染を調べた。たらちねでは市民ができるβ線の測定を確立し、福島県沿岸の事故後の影響も見つめてきた。そして、福島第一原発の敷地内のタンクにたまり続けているトリチウムなどを含む汚染水は「海に流してはいけない」と、警鐘を鳴らしている。
天野さんは、タンクの中身についても詳しい。漁業者たちなどの反対をよそに、海洋放出に向けての準備が粛々と進んでいるなかで、タンクの中身をきちんと知ってほしいと思い、天野さんに「パンドーラーの箱」の連載をお願いした。
この号に掲載されている2回目からいよいよ本題に入った。天野さんは難しく思われがちな内容をわかりやすく、かみ砕いて説明している。連載を読んで、海洋放出を考え、判断する一助になるといい。
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