476号

この素晴らしき世界 476号

緑の木々が見えるね
赤いバラも
僕ときみのために咲いているんだよ
そしてひとり思う
なんて素晴らしい世界なんだろうって

 ルイ・アームストロングの名曲「この素晴らしき世界」(What a Wonderful World)はそう始まる。新しい年が近づくにつれ、気がつくとこの歌が頭のなかを巡っている。一昨年に終わってしまったテレビ番組「サワコの朝」で、ゲストが紹介するお気に入りの曲にこの曲がよく選ばれていた。

 ルイ・アームストロングは1901年、アメリカ南部のミシシッピ川の河口にある港街ニューオーリンズの貧しい地域に生まれ、育った。少年時代に街で発砲事件を起こし、少年院でブラスバンドを始め、コルネットを吹いて音楽の楽しさを知った。出所後はミシシッピ川を行き来する蒸気船でコルネットを吹き、16歳ぐらいでプロになった。
 トランペットと歌で名を残したジャズマン。サッチモの愛称で慕われた。NHKの朝ドラ「カムカムエブリボディ」ではドラマ全編を通してルイ・アームストロングの「On The Sunny Side Of The Street」(陽のあたる道で)が大事な場面で流れた。
 「この素晴らしき世界」は1967年に発表された。作詞はジョージ・ダグラス、作曲はジョージ・デイビット・ワイス。ジョージ・ダグラスはベトナム戦争が激化するなかで、平和な世界を願って作ったという。
 シンプルな歌詞と素朴なメロディ。ルイ・アームストロングの慈愛に満ちたしゃがれ声が、穏やかで温かなやさしい世界をつくっている。発表当時、アメリカではヒットせず、ヨーロッパで大ヒットとなり、のちに数々の映画にも使われた。
 亡くなる前年、ルイ・アームストロングは新たにイントロを加えて再録音している。「What a Wonderful World」と歌いながら、日常のすてきさ、この世界がまんざらでもないことを伝えている。みんなで合唱したい。   

(章)

そのほかの過去の記事はこちらで見られます。