海岸線を歩く | 478号 |
仕事始めの日、ふと、いわきの海岸線を北(末続)から南(勿来)に向かって取材して歩きたいと思った。この春にも福島第一原子力発電所の敷地内のタンクに保管されているトリチウムなどを含む汚染水の海洋放出が始まろうとしていることがきっかけだった。歩き始めてみると、海岸線は震災で津波被害を受けた地区で、間もなく丸12年になるなかで、被災地区のいまを見つめてもいる。
ほんとうなら自転車で動くのがいいのだろう。寒さもあって車で移動しているので、地区を細やかに拾いあげられてはいない。それに平日と休日では出会える人の数も違い、バランスが悪いかもしれない。それでも地区のいまを肌で感じ、現状がある程度わかってくる。
ある海岸線の駐車場は午後、小学生の子どもを迎えにきた保護者の車でいっぱいになる。津波被害には遭わなかったのに空き家が目立つエリアもある。豊間海岸のイメージがある鳴き砂はいま、下神白の海岸がよく聞こえるという。
初めの予想ではいまごろ小浜や岩間海岸にたどり着いているはずなのに、まだ小名浜にも到達していない。のんびり散歩する精神で勿来までそれぞれの地区のいまを拾っていきたい。
(章)
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