『ふくしま原発作業員日誌』 | 481号 |
片山夏子さんの『ふくしま原発作業員日誌』(朝日新聞出版)を改めて読んでいる。片山さんは東京新聞の記者。震災翌日から東京電力や原子力安全・保安院を取材し、5カ月後、福島第一原発で働く作業員の担当になり作業員日誌の連載を始め、いまも随時続けている。
著書は2019年10月までの連載を大幅に加筆して翌年初めに出版され、話題になった。作業員の事故収束作業のほか、日常の断片や家族のこと、こころの内まで日誌のように書き綴り、福島第一原発をめぐる出来事をつけ加え、その時々を伝えている。
事故から5カ月間の状況は序章にまとめ、あとは年ごとに章立てている。読んでいると記憶の底に沈み、忘れていることを気づかされる。例えば、2011年末に政府が事故収束宣言をしたこと。処理水のように東電が炉心溶融を炉心損傷、汚染水を滞留水、事故を事象と言い換えたことなどさまざま。
第3章の2013年の題は「途方もない汚染水」。事故の2週間後、原子炉の核燃料を冷やすために注入した水が高濃度汚染水となって漏れ、建屋地下にたまっていることが判明。間もなく、超高濃度の汚染水が海に漏れ出ていることもわかった。
13年には急ピッチでのタンク建設、凍土壁建設の決定など、作業員たちは行き当たりばったりの後手後手の対策を嘆き「いずれ薄めて海に流すことになる」と予測していた。時折の振り返りが大事だ。
(章)
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