坂本龍一さんの思い | 483号 |
坂本龍一さんの訃報に、じわじわ喪失感に襲われている。
高校一年生の体育祭で縦割りクラスの応援に、先輩たちがYMOの「ライディーン」に合わせて踊り始め、テクノポップに刺激されて見よう見まねで一緒に踊った。満席の映画館で見た「ラストエンペラー」は音楽が印象的だった。リゲインのCMに使われた「energy flow」はピアノで練習した。そして原稿を書いていてのひと休みには、大貫妙子さんとの共演「3びきのくま」を聴いている。
訃報後、多くのメディアが特集を組み、坂本さんの生きざまをたどって私たちへのメッセージを伝えている。9.11後、坂本さんは非戦を訴え、平和をテーマに社会活動してきた。福島の原発事故後は、ほかの音楽家たちと脱原発の音楽フェスを開くとともに、震災に遭った東北3県の子どもたちのために東北ユースオーケストラをつくり、音楽監督を務めてきた。
2017年、郡山市で開かれたそのオーケストラのコンサートには、沖縄民謡歌手グループ「うないぐみ」を招いて「弥勒世果報」を歌ってもらった。
平和を祈る自然賛歌で、背景には「福島や青森など危険なものを押しつけられた県と、米軍基地のある沖縄は構造が似ている。沖縄の人は見えているのに福島などは見えていない人が多く、それに気づいてほしい」という坂本さんの思いがあったという。
最近は、言いたいことが言えない国になった日本を憂い「もっと言いたいことを言いましょう」と話していた。バトンは私たちに渡された。
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