ちきゅうパスポート | 491号 |
「ささめやゆき物語」展(9月10日まで)が開かれている仙台文学館で、ささめやゆきさんのトークを聞いた際、ささめやさんの絵本『すなはまのバレリーナ』(文は川島京子さん)と一緒に『ちきゅうパスポート』(BL出版・千九百八十円)を買った。縦18㎝、横10㎝ほどの蛇腹になっている絵本で、注意深く眺めるとあることに気づく。
この『ちきゅうパスポート』を作るきっかけは、昨年2月のロシアのウクライナ侵攻だった。浅草のどじょう屋に集まった、ささめやさんやあべ弘士さんたちが「子どもたちのためにできることはないか」と話していて「なにがあっても子どもたちとともに希望を持ちたい」と思いついたという。
子どもたちが地球を自由に移動できるように。そう願いをこめて、ささめやさんやあべさんのほか、スズキコージさん、田島征三さんなど24人の絵本作家が、それぞれの想像の国を描いた。国と国がつながっていくように、隣同士の絵が手やくちばし、糸、しっぽなどでひと続きになる工夫がされている。
あべさんが描いた国は「ジャングランド」。笑顔のゴリラが描かれている。地球上で一番の平和主義のゴリラは絶対、争わない。お父さんが子育てをし、オス同士がけんかをすると子どもが仲裁するという。イギリスのローラ・カーリンさんの「アミカ(ともだちの国)」は女の子の手に小鳥がのっている。
ウクライナのロマナ・ロマニーシンさんとアンドリー・レシヴさんの「ノダム(むすびめの国)」は、いろいろな想像をかき立てる。そして、ささめやさんは「みんなひとりじゃない」。それは『ちきゅうパスポート』の大きなメッセージで、パスポートが子どもたちのお守りのように思える。
蛇腹の絵をぐるりと見ていると、あたたかな気持ちになり、勇気づけられる。
(章)
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