『ためされた地方自治』のこと | 506号 |
いま、山秋真さんの『ためされた地方自治』(桂書房)を読んでいる。能登半島の突端の珠洲市にかつて2つの原子力発電所の建設計画があった。その賛否を巡ってまちは2分され、30年近く対立したが、2003年、計画は凍結された。本では代理戦争となった市長選や裁判を追いながら、珠洲市に原発計画が現れた1975年以降を振り返っている。
2007年に出された本だが、福島第一原発の事故が起きた2011年の夏に再版され、能登半島地震が起きた今年の2月に再々版された。建設予定地だった珠洲市の高屋地区は能登半島地震の震源近く、寺家地区も地震と津波で大きな被害に遭い、地震後、「珠洲市に原発が造られなくてよかった」と、当時を知る人たちが口々に話していた。
珠洲市では1986年にチェルノブイリ原発事故が起きた直後、市議会が原発誘致を決議。89年、原発立地可能性調査が始まった。並行読書しているので、まだ4分の1しか進まず、いま93年に反対住民たちが候補者を出して、市長選を戦っているところを読んでいる。その2年前、住民たちは県議、3人の市議を当選させていた。
震災13年の報道が各メディアでされ、たまたまTBS系列の番組「報道特集」をつけていたら、珠洲市の原発計画を取り上げていた。当時、電力会社が住民に配布していたチラシにもふれ、そこには「原子力発電所は岩盤のしっかりした場所が選ばれている」「地震には自信がある」と書かれていた。当時、原発があった双葉町も「豊かになった財源で農業の振興が図られている」と紹介されていた。
その計画に携わった関西、北陸、中部電力はいまなにを思うのだろう。
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