511号

さようなら根本町長 511号

 元町長の根本良一さんの訃報に接し、5年ぶりに矢祭町を訪ね、ほんとうに根本さんがもういないのを実感し、言葉にならない寂しさと喪失感でいっぱいになった。いまもまだ引きずっている。
 初めて根本さんに会いに矢祭へ行ったのは2003年。日々の新聞を創刊して間もなく、静岡市と清水市が合併して、いわき市が日本で1番、面積の大きな市ではなくなったことがきっかけだった。その2年前に合併しない宣言をした矢祭町の根本町長はいわき市をどう見て、どう思っているのかを知りたかったからだった。
 町役場に連絡してその旨を伝えると、根本さんの予定を取ってくれ、後日、いわきから矢祭町役場までのルート、それも田人経由と古殿経由の2パターンが書かれたファクスが届いた。「お勧めは古殿経由です。気をつけていらしてください」と。
 約束の日時に、ふるぶるしい町役場の町長室で根本さんと会った。町長室には背の高い扇風機が置いてあり「役場の立て替えなんて最後でいい」と言い、トイレ掃除も職員がしていた。根本さんが目指したのは、まちの自主自立。そのために熱く、労力を惜しまず積極的に行動し、本当の意味での地方分権を実現しようした。
 以来、1年に1度、矢祭を訪ねて現地を取材するとともに、根本さんに会って話をした。その人間性に触れれば触れるほど、細やかな配慮をする優しく温かな人だとわかった。でも、この5年、コロナを理由に行かなかった。それが悔やまれてならない。

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