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のびのびのびっこ | 519号 |
いわき市立美術館で開かれている「NEW BORN荒井良二」展に「のびのびのびっこ」と名づけられた短冊がいっぱい、高鉄棒にぶらさがっている子どものように紐などにつるされている。
2012年に作られた作品集『荒井良二 在る子ども』に、荒井さんは詩のような文章を書いている。
大人も1日のうちで何回も子どもに戻る瞬間があるのでは。子どもも1日のうちで何回も大人になっているのでは――その子どもの姿を表現したのが「のびのびのびっこ」だ。
例えばカレーの匂いに、キャンプで食べたカレーを思い出して、一瞬で子どもに戻る。匂いだけじゃない、音やもの、風景など過去への入口は縦横無尽にあり、不意にそのドアにふれ、大人は日に何度も子どもと大人を行き来する。
子どもは、戦争を始めた大人に「戦争はやめて」と思っている。大人たちに向けた内なる声を持って、大人を超えた大人の存在としての子どもの意識がある。そういう超大人になる瞬間が子どもにはあるという。
結局、だれのなかにも大人と子どもが共存していて、伸び縮みしている。こころのどこかに、のびのびのびっこを飾っておくと、肩の力が抜けてよくわからない呪縛から解放され、シンプルな問いにちゃんと答えられるようになる。
(章)
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