知憩軒のはなし | 521号 |
酒田・鶴岡の旅に向けて準備をしていた時、インターネットで何かを検索していて「d design travel」山形号というページに出合った。説明によると、その県に2カ月暮らすようにして旅し、感動したものだけを観光、飲食、買い物、喫茶、宿泊、人物の6つのカテゴリーで、本音で紹介する、ということだった。
目次のようなものだけは見られたので「その土地で食事をする」に載っていた知憩軒をさらに検索してみた。ちょうど鶴岡にある農家民宿兼レストランだった。主の長南光さんは20代のころから子育てと親の介護、さらには農業と忙しく、なかなかほかの土地へ出かけられなかった。それならばお客さんに来てもらって、外の空気を運んでもらおうと考え、始めたという。
自宅を改装して1999年に農家民宿をオープン。五年後、農家レストランを併設し、ランチを始めた。光さんがその土地で育てた野菜を使い、自身が昔から食べてきた郷土料理を出している。身欠きニシンとじゃがいもの煮つけ、高野豆腐のしめじと昆布のしみ炊き合わせ、切り干し大根は定番メニュー。あとは、その時々の旬の野菜料理が加えられる。
旅の計画では鶴岡で昼食をとって帰路につくので、庄内あさひICから車で10分の知憩軒は都合がよく、ランチの予約をした。その日は、定番メニューに紫蘇の実の塩漬けがのったご飯と味噌汁、菊の酢の物、ナスとシシトウの素揚げ、ゴボウ煮などで、シンプルだけれどとてもおいしく、いっしょに旅した仲間たちにも好評だった。
知憩軒は12月から3カ月、冬ごもりに入る。その間、光さんはつづれ織りをするという。
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