529号

ビッグイシュー 498号 529号

 いま、東京や大阪などの街角で、ホームレスさんがビッグイシュ148号(3月1日号)を手に持ち、販売している。例年、3月1日号は福島特集号だったが、今年は趣向を違えて「ふくしまから」というレポートで、フリージャーナリストの藍原寛子さんとともに、1つずつ記事を書いた。
 藍原さんは震災でいまも行方がわからない娘の捜索を続けている大熊町の木村紀夫さんと、沖縄から駆けつけた具志堅隆松さんたちの遺品や遺骨の捜索に参加し、現地の様子をルポした。
 わたしは震災当時、小高商業高校の校長をしていた、いわき市で暮らす詩人の齋藤貢(本名・貢一)さんのこの14年とこれからを、齋藤さんの4冊の詩集とともに伝えた。
 齋藤さんは2009年に小高商業に赴任。翌年に出した詩集に詩「小高へ」が載っている。震災の2年後の詩集には詩「南相馬市、小高の地にて」、それから5年後の詩集に詩「夕焼け売り」、昨年6月の詩集に詩「遠い春」があって、それらをかいつまみながら齋藤さんの思いを伝えることで、原発事故とは何なのかを考えて欲しいと思った。
 震災・原発事故から14年が過ぎた。14年という歳月を原発事故で考えると、瞬きにもならないことを実感する。そして、こんな大惨事が起きたのだから日本から原発はなくなるものと思っていたが、とうとう原発回帰に舵をとった。
 「みちのくは、花冷えの遠い春だ。」齋藤さんの詩「遠い春」はそう終わっている。15年目の春がそこまで来ている。 

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