537号

夕方の公園で見かけた男性 537号

 

 数日かけて、いわきの海岸線を久之浜の末続から南に向かって移動しながら、出会った人たちにさまざまな話を聞いた。季節的に草木が日々伸びているのもあるだろうが、車を走らせながら感じたのは、全体的にまちが汚いことだった。
 そういえば以前、他地域で暮らす家族がいわきに帰って来る度に「どうしてこんなにまちが汚いのだろう」と言っていた。家族が暮らしていた地域では、だれに言われるのでもなく、それぞれが暮らす周囲を当たり前のようにきれいにしている。
 例えば、よく飼い犬を連れてドライブがてら行っていたサンマリーナの剣浜の砂浜は、背の高い草に覆われて案内板も見えない。海風に誘われて桟橋を歩いても気持ちよさは半減し、砂浜でお母さんと遊ぶ子どもも、マリーナの利用者も不快に感じているだろう。海岸だけでなく、湯ノ岳などの山も、町も、道路も汚い。
 そんなことを思っていたある夕方、平の小太郎公園の前を通りかかると、70代後半ぐらいの男性が黙々と草むしりをしていた。男性は以前、小太郎公園のそばに住んでいて、いま暮らしている福島高専近くから自転車で来て、公園の掃除をしているという。多くは語らず、持参した2枚のゴミ袋を草で一杯にして、指定のゴミ置き場に置いた。
 いまは亡き高校の数学教師だった山口研次さんや大黒屋の馬目佳彦さんも、黙ってまちをきれいにしていた。             

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