538号

舘野泉さんを巡るはなし 538号

 

 前号(537号)の「ストリートオルガン」で、ピアニストの舘野泉さんが昨年9月にインド、ブータン、ネパールを演奏旅行した際、一緒に旅した横浜の気賀沢忠文さんの旅行記を紹介した。その新聞を発送して間もなく、忠文さんからメッセージが届いた。
 「私がまるで芙美子さん(忠文さんの奥さま)と一緒に舘野さんとの旅を楽しんでいるかのように書いてくださって、うれしく思います。お電話したいのですが、声を聞いたら涙が溢れそうなので、少し落ち着いたらにします」と書かれていた。
 それにもう1つ、ネパールの日本大使公邸のピアノはアップライトではなくグランドピアノです、とも。旅行記を読み間違ってしまいました。この場を借りて、お詫びして訂正します。
 そのあと戸田邦司さんの奥さまの節子さんから「舘野泉さんについては、私たちも懐かしい思い出があります」というメッセージを受け取った。ご夫妻がノルウェーのオスロにいた1973年から77年にかけて、オスロ大学で日本文学を教えていた先生が舘野さんを連れて、戸田さんの家を訪れていたという。
 舘野さんは年に1、2回、ノルウェー放送協会の録音と演奏会のためオスロに来て、その度に戸田さん宅で夕食をともにし、楽しい時間を過ごした。ある年、戸田家では港で60匹近いウナギを入手した。オスロでは太いウナギを燻製にするので、細いウナギは食べない。
 這い回るウナギたちを戸田夫妻は悪戦苦闘で白焼きの形にして冷凍保存し、舘野さんが来た時にもごちそうした。「オスロで蒲焼きが食べられるとは」と大喜びしたそうだ。舘野さんの奥さま(故人)はソプラノ歌手。オスロの日本大使館で、ふたりで演奏会をして、豊かな声を響かせたこともあったという。

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