551号

「テミスの不確かな法廷」のこと 551号

 

 このところ2カ月に1回ぐらい、裁判の取材をしていることもあって、いま、NHKのドラマ「テミスの不確かな法廷」を毎週、見ている。松山ケンイチさんが演じる発達障害を抱えた裁判官が自らの特性と格闘しながら難関事件に挑むストーリー。3話、4話は、運送会社のドライバーの過重労働による死亡事故を巡る民事訴訟を描いた。
 過労が原因と信じるドライバーの娘は会社を相手に訴訟を起こすが、会社はドライバーの過失を主張。そんななか会社側の責任を示す新たな証拠が見つかる。しかし運送会社の背後に国が関係する外郭団体の影と、最高裁事務総局からの圧力で遠藤憲一さんが演じる裁判長が訴訟の指揮に迷う。
 さも限りなく原告に歩み寄ったふりをして、請求額の8割の賠償金での和解を提案する会社側の弁護士に、ドライバーの娘がその場で思いを陳述する。

 裁判って何ですか。毎回、いろんな人がそれぞれの立場で都合のいいことを言って、真実がどんどん変わっていく。ただ、私は本当のことが知りたいのに、と。

 それに対し「和解のつり上げが狙いか。反訴する」と言う会社側の弁護士に、伝説の反逆児と言われる裁判長は「法廷は真実を明らかにする場。ここで明らかにならなかったとしたら、また事故が起きるかも知れない。訴訟の遅延を目的とする忌避の申し立ては却下します」と、本領発揮した。
 原作者の直島翔さんは新聞記者時代に司法担当を経験している。せりふが胸にしみ入る。

 

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