天平の詩

 

 水たまり
 松の雪が映つてゐる
 ぽとんと雫がおちて
 また
 松の雪が映つている

 

 天平の最初の妻・ユキが亡くなったあとの詩。交友があった写真家の土門拳は「これは写真だ」と感想を述べている。天平の詩には目の前の情景を詩として現しているのだが、それでは終わらない内面にある静けさ、ぴんと張った精神世界のようなものが行間に隠されている。