天平の詩

 

  世界万人に真に勝つ武器は
  神のやうに無手でありませう
  前を正しく見て
  物を持たないことでありませう
  (中略)
  手は垂れて何も蔵さず
  慈悲と無慈悲の中ほどに立つて
  身体のいづれにも力を籠めぬ
  あの平かな姿であり
  言葉であり行ひでありませう

 (戦争に際して思ふ 一 最勝より)

 

 天平は軍隊を経験している。応召されたときに本気で逃げることを考え、知り合いのところへ相談に行っている。何がいやかと言ったら個人の自由を束縛される団体行動であり、有無を言わさぬ暴力だった。「素手」は天平の哲学であり、思想でもあった。