385 自序

自 序 

  自分は自分の道を一歩一歩行つた
  つもりでありました
  しかし或る時は立ち止り或る時は振り返つて
  逆に二三歩あるいて仕舞つたことがあります
  二つのうち一つを断ち切つて喋らずに
  進むことの出来なかつた者であります
  しかしこれで精一杯でもありました
  赦してもらひたく思ひますが、
  誰に向つて言ふのか
  結局自分自身そして為すことに
  言ふより仕方ありません


 草野天平が最初に出した詩集「ひとつの道」の最初に載っている自らの覚悟ともいえる文章。最初の妻・ユキの死後、天平の魂は悲しさと虚しさのためにさまよい続け、詩の世界へと向かっていく。