自 序
自分は自分の道を一歩一歩行つた
つもりでありました
しかし或る時は立ち止り或る時は振り返つて
逆に二三歩あるいて仕舞つたことがあります
二つのうち一つを断ち切つて喋らずに
進むことの出来なかつた者であります
しかしこれで精一杯でもありました
赦してもらひたく思ひますが、
誰に向つて言ふのか
結局自分自身そして為すことに
言ふより仕方ありません
草野天平が最初に出した詩集「ひとつの道」の最初に載っている自らの覚悟ともいえる文章。最初の妻・ユキの死後、天平の魂は悲しさと虚しさのためにさまよい続け、詩の世界へと向かっていく。