390 初夏の日なか

 

  一すぢの糸のやうに
  海の見える
  草やまの小径のところに
  いちりんの薊は咲いてゐて
  浅くしれぬやうに
  風はかよつてゐた
     (初夏の日なか)


 第一詩集『ひとつの道』に入っている。初夏の情景を見事に表している。天平には季節の空気感をうたうものにいい作品が多く、読み手の思い出や感性によって感じ方変わっていく。
 春、夏、秋、冬の秀作を探すのも楽しみの一つといえる。