これから懐手をして歩くのは
やめることにしよう
人から辞儀された時など
失礼であるし
それに又
ふしだらな気分を与へるから厭だ
寒くともはつきりと手を出して
天上の威儀に従つて
天平の遺稿の一つ。題はついていない。天平が亡くなったあと、梅乃は松禅院を訪れた都新聞の記者、仲村譲に手渡した。この未完未発表の作品の裏には、鉛筆による推敲の文字がびっしりと書き込まれていた。詩を書いていた中村はそれを見て胸が締め付けられそうになり、自分の甘さを痛感して筆を折ってしまった。
これから懐手をして歩くのは
やめることにしよう
人から辞儀された時など
失礼であるし
それに又
ふしだらな気分を与へるから厭だ
寒くともはつきりと手を出して
天上の威儀に従つて
天平の遺稿の一つ。題はついていない。天平が亡くなったあと、梅乃は松禅院を訪れた都新聞の記者、仲村譲に手渡した。この未完未発表の作品の裏には、鉛筆による推敲の文字がびっしりと書き込まれていた。詩を書いていた中村はそれを見て胸が締め付けられそうになり、自分の甘さを痛感して筆を折ってしまった。