406 老木

老木

  乾いてもはや気色もなく
  単にいつぽん微かに立つて
  小さな枝も
  久しく動かぬ
  そよそよと風が吹いている


 天平の生家に大きなクスノキがある。そもそも暖地に多いのだが、いわきでも見られる。生家のクスノキは天を圧するほど大きく、いつも見上げてしまう。兄の心平はその大木のなかにフクロウが住んでいて、夜には鳴き声が聞こえてきた、と書いている。その木はいまも健在で、確かに「そよそよと風が吹いている」という空気感がある。いまも残っていることがうれしい。