408 簡素

簡素

  柔らかな雨はふつて
  砂をしめらせてゆく
  向ふの松はしだいに薄らいで
  なくなつた
  今はなにの音もなく
  すくない波は
  渚までくるが
  そのまま帰らない


 天平は酒が飲めず、でも酒の席には出て、にこにこしながら人を見定めているようなところがあったという。そういう意味でこの詩は、天平らしい詩といえる。表面的に達観しているようだが、その心中はわからない。そんな怖さも見える。のちに、曲がつけられた。