今ゐる処に
しつかり
ゐるのが
一番いいのだ
『定本草野天平全詩集』の未定稿詩篇のなかに収められている。新型コロナウイルス禍で死の恐怖が身近にある。このウイルスの怖さは容体が急変し、あっという間に死に至ってしまうこと。ワクチンも決定的な治療薬もなく、ひたすらじっとして予防に努めなければならない。天平のこの言葉がどんなときに書かれたのかはわからないが、いやに達観している。そして現代人に向けて「余計なことを考えず、ふらふらせずにじっとしているしかないんだよ。いまはそれしかない」と言っているようにも思える。