414 夜明け

夜明け

  人の世はまだ動かない
  家も屋根も
  みいんな睡つてゐる
  東の方の遠い静けさ
  音もなく
  星は消えてゆく
  それでも揃つて
  みいんな動かない
  ほんたうに優しく目立たない
  なんといふ微妙な始まり方なんだらうか


 『定本全詩集』のその他の作品に入っている。天平らしい静謐な世界が展開されていて、情景が浮かんでくる。朝4時すぎの海辺の散歩はいつもこんな感じで、戻るころには太陽が上がって明るくなっている。そしてまた1日が始まる。