429 新年の讃

 

  森閑と水を帯びて
  写るほどの
  実に清浄無垢な物の始め
  年の始め
  上も下も右も左も
  老若男女ことごとく
  自ら解き自ら戒めて
  けつきょく喜々とした
  素性に還す
  根源につながる現代の
  賑やかで新しい笑ひと威儀
  きらきらとしぴかぴかとして
  真に曇りない虚(こ)中の調べ
  十万明朗天然の景
  一千九百五十一の重みある
  実に創めの日だ

 (新年の讃)

 

 1951年は昭和26年。天平が亡くなる前の年、新聞に掲載された。凜とした新年の空気と天平の透き通った精神が背筋をピンと伸ばしてくれる。