436 真昼

 

  名も知れない浜辺に
  少しばかり月見草が咲いてゐた
  海は青く
  どこまでも平かで
  全く音もなく
  砂は乾き定まり
  月見草は揺れもしない
  舟もないし
  雲もない

 (真昼)

 

 最初の詩集『ひとつの道』に入っている。天平は路傍の花に目を向け、詩にしている。月見草、桔梗、薊…。決して派手ではないが凜とした美しさを持つ野の花々たち。そのたたずまいに潔さを感じ、天平や梅乃の生きざまと重なる。