
更に自分は、はつきりと行く
人の造つた形に別れ
喜怒哀楽の情にも別れ
全き人間となるために
此処で、きつぱりと皆と別れる
何が本当の音声であり
何が本当の言葉であるか
どしどし雨に打たれ
如何にも俺は俺らしく
本当でしかもいい声を
どうしても
さうだ
どうしても出さなければならなぬ
(詩人の旅)
『全詩集』のなかの、「その他の作品」に入っている。比叡山入りの覚悟が見える。天平は『文藝春秋』の編集長・池島信平と同世代で交流があった。この詩は池島に渡して掲載された。「どしどし雨に打たれ」が天平らしい。