437 詩人の旅

 

  更に自分は、はつきりと行く
  人の造つた形に別れ
  喜怒哀楽の情にも別れ
  全き人間となるために
  此処で、きつぱりと皆と別れる
  何が本当の音声であり
  何が本当の言葉であるか
  どしどし雨に打たれ
  如何にも俺は俺らしく
  本当でしかもいい声を
  どうしても
  さうだ
  どうしても出さなければならなぬ

 (詩人の旅)

 

 『全詩集』のなかの、「その他の作品」に入っている。比叡山入りの覚悟が見える。天平は『文藝春秋』の編集長・池島信平と同世代で交流があった。この詩は池島に渡して掲載された。「どしどし雨に打たれ」が天平らしい。