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  詩人の言葉は純潔である。
  純潔とは正確ということである
  一人でぽつんと陽のないところに
  立っていても陰がある
  素手で最も強い力を揮う
  草野天平はそういう本当の詩人であった
  人々よ
  この言葉の猥雑な世紀にあって
  一人でも多く彼の純潔に酔うように

(河上徹太郎)

 

 第2回高村光太郎を受賞した際に、河上徹太郎が寄せた。社長の津曲篤子が依頼したのだろう。彌生書房が出した「全詩集」の帯に印刷されている。徹太郎は山口県出身で、文芸、音楽評論家。小林秀雄、中原中也、白洲次郎などと親交があった。「純潔」「正確」「陰」「素手」…。この言葉のつながりが、徹太郎の天平に対する見方なのだと思う。