日比野克彦の部屋

美術館と野外の関わり

 アートには、美術館で作品を展示する活動(展覧会)と、いろいろな場所で地域市民と時間を共有して事を起こして行く活動(アートプロジェクト)があります。その関係性はどうなっているのでしょうか?
 美術館という建物の特徴は安定した一定の空間(温湿度、照明)がありますが、屋外とか一般の建屋(店、家、学校など)はそうではありませんし、屋外は尚更です。美術館でできないことを外で行う、外だからこそできることを行う。そんな理由が多くの屋外型のアートプロジェクトにはあります。しかしここで問題が起こってきます。アートプロジェクトの活動を美術館で紹介する場合は、どうしたらいいのでしょうか?
 もともと展示空間には適していない表現であったものを展示室に連れてくるというのは、野生で育った生き物を剥製にして展示するようなことなのか? それとも写真とか映像でその生態を紹介するのか? いずれにしても、所詮それは本物ではないということになります。しかし今回私が行った姫路市立美術館での展示では、そうはなっていなかったのです。
 2003年から新潟で始まった「明後日朝顔プロジェクト」というものを今年度は、姫路市内で市民と約百カ所で行っています。姫路市立美術館の展示室から見える窓辺にも展開しました。そして展示室には99枚の明後日朝顔の種の絵を展示しました。この絵は2007年に金沢21世紀美術館で「明後日朝顔プロジェクト」を行った際に明後日朝顔の種を収穫し、美術館のプロジェクトルームで滞在して描いた作品です。現在は21世紀美術館の収蔵作品になっています。
 13の地域から金沢にやってきた苗が21世紀美術館で育てられ、私は13の土地の記憶を種の中に描きました。明後日朝顔は種になると記憶を次の土地に運んでいきました。2014年に姫路にも明後日朝顔がやってきて、その種からとれた種が今年は姫路市立美術館で育てられました。展示室の作品と屋外の朝顔が接続することにより、美術館とアートプロジェクトが繋がったように見えたのです。
 この体験をきっかけにして、今後この両者(美術館とアートプロジェクト)の関係に対して、いろいろ考えていきたいと思っています。

(アーティスト)

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