日比野克彦の部屋

 

ハバナビエンナーレ

 

 11月5日にハバナビエンナーレにTURN プロジェクトが招待されて、東京からパリ経由でキューバに向かいました。経由地のパリで、ハバナ行きの便が欠航になり翌日の同時刻の便になった、と知らされて、シャルルドゴール空港近くのホテルで丸一日過ごすことになりました。欠航の理由はキューバを襲っているハリケーン・ラファエルの影響です。
 カリブ海から北上するハリケーンの行き先であるアメリカのフロリダではこの日、大統領選の投票日です。テレビではトランプ対ハリスの投票速報がどの局も放送されていました。BBC、CNNフランス国営放送A2、イタリア放送、アラビア放送などなど各国のニュースはアメリカ大統領選の行方を追っていました。私もこの様子が気になり、欠航のおかげでホテルのテレビでさあ、どっちだ! 赤か? 青か? とテレビに見入りました。
 移民政策に厳しいトランプ政権がなった場合、これから私が訪れようとしているキューバの外交は、厳しい状況に追い込まれることが予測されます。先乗りしているTURN プロジェクトの藝大スタッフにメールで連絡を取ろうとするのですが、キューバのネット事情は悪く、常時つながっているわけではないので、時々途切れ途切れに連絡が入ります。
 ハリケーン・ラファエルは、速度が遅くキューバに猛烈な被害を与えているようです。すべての公共機関が閉鎖され、外出禁止になり、計画停電が行われていると連絡が入りました。送られてきた写真にはろうそくを灯しながらアートプロジェクトの制作を進めているアーティストの写真が送られてきました。
 しばらくするとホテルのテレビにはトランプの当選を通知するニュースが! そしてメインの画面の下には文字ニュースで、ハリスが負けを認めると流れています。そんな政治ニュースの中で、文字ニュースのヘッドラインに現れたのが、キューバにラファエルが大きな影響与えて全ての機能を奪っている、というニュースでした。キューバにとってはハリケーンの影響も気になりますが、トランプ政権によって襲ってくるのは…?  今回のハバナビエンナーレは「水平の彼方に!」というタイトルでグローバルサウスなどをイメージしているアートの祭典です。様々な災害や社会変化がありますが、人が生きる力であるアートの力で、人と人をつないでいきたいと考えています。

  

                                     (アーティスト)


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