日比野克彦の部屋

 

J TRIP BAR

 

 1986年に東京六本木に開店した「六本木J TRIP BAR」のために制作した布製のアートワークスが2024年4月に西麻布のギャラリー「WALL alternative」に展示された。このギャラリーはかつて、J TRIP BARの西麻布の店があった空間で、そうした縁がきっかけで展示することになった。
 このギャラリーのディレクター、加藤さんと会ったのは、私が毎週レギュラーでホスト役をしていたTOKYO FMの番組にゲストで来ていただいた際に、トークの中でギャラリーの話になり「えーその場所は!」という展開になったのだ。布に描かれたアートワークは80年代後半から90年代にかけての盛り上がりが伝わってくる味を醸し出している。
 実はこの作品、これまでにも何度か美術館で展示をしてきた。白い壁にぽつんと展示されたのだが、その時の作品の印象は、どこか寂しげな剥製のような佇まいだった。しかし、この飲食だった店舗をギャラリーとして使っているこの空間だからこそ、作品の印象が違ったのだと思う。作品を伝えるということはどういうことなのだろうか? 表面的なものとしての保管だけでは見えてこないものがある。
 展覧会期間中に幾人か、当時の六本木JTRIPBARを知る人と会った。アートの領域があるのかないのか、アートの領域があるとしたらそれは成長しながら分化されていくものなのだろうか? 社会の流行も経済も…。それはみんなが、走りながら人間らしく息づいていた時であった。
 人は湿度ある息をし、その呼吸は果てしなく空間を響かせ続ける。その息を作品は吸い取り、時間を超えて今ここに届けてくれている。



                                     (アーティスト)


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