日比野克彦の部屋

物理的な制限のなかでの不安と希望

オンラインの世界

 オンラインでの会議、授業がもはや当たり前になりつつある。大学ではゲスト講師としてアーティチストたちの話を直接聞くなどのブッキングは、移動を伴わない分、スケジュールは組みやすくなり、また交通費分の経費も削減される。実材を必要とする実技は、材料を送ったり、各自で手配したりして工夫を凝らしながらも、後期には大学のアトリエで出来る前提で、この状況ならではのやり方を前向きにやっている。
 大学の1年生はオンラインで授業をする中でクラスメートと仲良くなったが、まだ直接は1度も会ったことがない。いつか会う時が来るのが楽しみなような、ちょっと不安な気持ちがあるという。
 6月6日に明後日朝顔全国会議をオンラインで行った。これまで、水戸市、天草市、小松市などで行ってきて、今年は姫路市で行う予定だったけれども、来年に延期となった。折角オンラインでやるのであればと、アートプロジェクトの授業も兼ねて、藝大生にもこの会議に参加してもらった。また岐阜県美術館のアートコミュニケーターにも、そしてフェイスブックでライブ配信して一般の方にも視聴できるようにした。
 物理的な制限のあるなかで広がりにくかった部分が、一気に解放された感覚はある。一長一短ではあるが、この緊急事態の中で半ば強制的にオンラインへと移行せざるを得なかったが故に、設備投資、技術取得など、いささか煩わしく避けてきたことも、一気に行えたということである。コロナがいつか落ち着いた時、便利なものは残っていくだろう。行動制限されたことにより生まれてくる新たな生活様式は、誰しもが進んで行いたくなるようなことにしていかないと、真には定着していかないだろう。
 緊急事態宣言は解除されたけれども、6月4日に東京アラートが発令された。第2波が来るのか来ないのか? 街に人は増えつつある。美術館の展覧会も一部再開し、飲食店にも人が戻り始めた。「今が大切な時期です」という言葉も、もはや通じなくなっている。

(アーティスト)

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