デパートを徘徊するHIBINO
久しぶりの個展 |
久しぶりに東京のギャラリーで個展を開きます。いつぶりだろうか? ひょっとしたら15年以上ぶりになるかもしれない。美術館での展覧会とかは時々やっていたけれども、新作の作品を展示するのはホント久々です。場所は日本橋三越に3月18日にオープンする現代美術ギャラリーです。タイトルは「X DEPARTMENT 2020」で、店内の売り場やショウウインドウにも作品を展示します。
X DEPARTMENTとは1991年に新宿伊勢丹美術館で行った3人展(関口敦仁・タナカノリユキ・日比野)の展覧会名で、副題として脱領域の現代美術というものでした。あれから20年、伊勢丹美術館は閉館し、伊勢丹と三越は経営的合併をし、三越に現代美術ギャラリーができるという変遷を経て再びX DEPARTMENTが出現いたします。
1980年代は商業空間であるデパートが最先端のリアルな現状の文化発信を行っていて、百貨店には美術館があり、伊勢丹はじめ、西武美術館、大丸、そごう、などにも美術館がありました。日常生活の中に文化が並走していた感じの時代だったと思います。そんな中で、当時私は伊勢丹美術館という大衆の空間にプライベートを持ちこみました。自分のアトリエ空間の私物を全て作品として展示し、尚且つ私自身が閉店後の無人の店内を徘徊する映像を展示品にプロジェクションしました。
大衆空間にプライベートを差し込んで行くというのは現代でいうと、SNSの状況と似ているのかもしれません。物理的な空間ではなくネット空間、私物という物ではなく、私見という意見。そんな時代における「X DEPARTMENT 2020」に出品する新作の素材は段ボール。モチーフは「デパートを徘徊するHIBINO」です。当時の生々しい実験的体験が私の中で確実な記憶となり、私の基盤の一部となっているこの記憶を、プライベートな事件として作品にしていきます。
80年代当時の私が段ボールに描いていたモチーフは、当時の私の身の回りの思い出や憧れでした。例えば、靴、スタジアムジャムパー、飛行機、白黒の古い写 真集・・・。ダンボールに描くときには私の身に染み付いている記憶の一部を取り出してくような行為なのかもしれないと改めて感じました。
また、私の代わりにマネキンが作品となって登場もしています。どうぞお楽しみに。
(アーティスト)
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